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夢の靴職人

2012.02.04.Sat.04:37
久々に手に取った一冊。
かの高級女性靴ブランドの創始者にして、名だたるセレブリティ御用達の靴を作り続けたサルヴァトーレ・フェラガモの自伝です。

$Senovilla Japon(セノビージャ・ハポン)公式ブログ

『夢の靴職人——フェラガモ自伝』サルヴァトーレ・フェラガモ著/堀江瑠璃子訳 文藝春秋社刊 1996年

まず目を奪われるのは、表紙のモノクロ写真。
床一面に拡げられた木型には、顧客一人ひとりの名前が記されています。
「SOPHIA LOREN」
「GRETA GARBO」
「SILVANA MANGANO」
「ANNA MAGNANI」…
個人的な好みでピックアップしましたが、上記以外にも著名な女優たちの木型がずらりと彼を取り囲んでいます。
ちなみに、彼が手を触れているのは「IRA VON FURSTENBERG」――貴族にしてドイツの女優であるイーラ(アイラ)・フォン・フュルステンベルク――の木型。
踵が細く甲の薄い足の持ち主だったことが、写真からもよくわかります。
(私のフィッティング経験から言っても、山の手育ちのお嬢さまには、このような華奢な骨格の方が非常に多いです。)
対照的にソフィア・ローレン(私の大好きな女優の一人です)の木型は、幼少期の貧しい生活から銀幕のスターにまで昇り詰めた彼女の人生を象徴するかのような逞しさ。
2年前に映画「NINE」で主人公の母親役をつとめた彼女は、77歳のいまも現役で活躍中。
こんなパワフルな足の持ち主なればこそ、でありましょう。

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       IRA VON FURSTENBERG



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       SOPHIA LOREN


この本とはじめて出逢ったのは、私自身が靴作りを始めるはるか前。
当時はまさか自分で靴を作ることになるなんて想像もできませんでしたから、一人の著名な靴職人の生い立ちや、どんな風に自分自身が納得のいく靴を作り上げてきたか、といったストーリーの部分に関心を持って読みました。
今回は、「新しい木型を創る」という自分自身のテーマにやや手詰まり感をおぼえ、具体的なヒントを求めての再読となりました。

いやはや、これが目から鱗の連続。
1956年に書かれた自伝ですから、若干記述が旧くなっている部分はもちろんあります。
でも「第七章 秘密を探し求めて」「第八章 ぴったりの靴」や「第十六章 健康な靴」「第十七章 靴の買い方と良い歩き方」などを読むと、今日足と靴の間で起きている幾多のトラブルが半世紀以上前にすでに出尽くしていたことを、改めて思い知らされます。
そして、現代ではその問題が、いっそう複雑かつ深刻の度を増しているわけです。
第七章と第八章は靴作りを目指す若い世代の方々に、第十六章と第十七章は靴が好きな方々や一生元気に歩き続けたいと思う方々に、ぜひご一読をお勧めします。
なぜならこの自伝は、サルヴァトーレの愛する妻ワンダと「歩かなければならないみなさん」に捧げられているのですから。

今回読み返してみて最も驚いたのは、フェラガモ自身が自分の靴を作り上げていくプロセスについての記述でした。
彼がそれまでの靴作りに限界を感じてまず行ったことは、解剖学、とりわけ足の骨格の勉強のために夜間学校に通うことでした。
次にエネルギーを傾注したのは、抽象的な解剖学の理論から、具体的な採寸(フィッティング)の方法を確立すること。
そして、その採寸結果を忠実に反映させるための木型を作成し、新しい靴の製法を浸透させるために若い職人を育成し、さらに事業規模の拡大によって商品の質が落ちることがないようシステムを構築することだったのです。

思えば、自分の足のトラブルをきっかけに既成靴の限界を知った私は、最初にドイツ人マイスターが教鞭をとる靴学校で、整形靴の知見や技術、解剖学、整形外科学を学び、並行してフスフレーゲ(ドイツ式フットケア)の理論と技術を学んだのでした。
卒業後も、採寸と木型作成、手縫い靴を教える工房に通い、注文靴専門店でフィッティング技術を学び、それまでに得た知識とフラメンコを通して得た身体感覚を総合して、現在のフィッティングのメソッドを作り上げてきました。
そしていま、新しい木型を作るために、そしてその木型を使って新しい靴づくりのシステムを作り上げるために、アタマを悩ませているわけです。
このプロセス、まったく同じじゃん!

半世紀も前に同じテーマで格闘した天才がいたのだから、現代の私たちはどこかで要領よく端折ってショートカットできないものかと思いますが、それができないところが靴づくりの奥深さ、難しさ、そして面白さなのかもしれません。
いま自分がテーマとして取り組んでいる問いが、自分の生まれるはるか以前から続く靴づくりの歴史の延長線上にある、小さな小さな一点を占めているという再発見。
「エライことを始めてしまったなー…」とがっくり気落ちする部分もあり、天才靴職人から励ましのメッセージを送られているような妄想もあり、読後感はなかなか複雑です。

…この感じ、何かに似ているな。
そう、ホントに素晴らしいと思えるフラメンコに出逢った時も、同じように疲労困憊と心が震えるような喜びを同時に覚える私なのでした。
そうか、要するに手に負えないくらい難しくて奥深くて熱くて面倒くさいことが、私は好きだったんだな…と自分のドM気質を改めて実感。
何ごとにつけ、「要領よく端折ってショートカット」なんて、できないものなんですね。

というわけで、明日からまたがんばろっとビックリマーク

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コメント
1 ■素敵な仕事です。
おしゃれは足元から、とよく聞きますが、健康も足からですよね。靴は体全体の健康に対して重要な部分を担ってますね。一人一人違うからこそきめ細かい対応が必要です。それを一人で実現しているなんて素晴らしいと思っています。くれぐれもお体に気をつけてよいお仕事してくださいね!
2 ■Re:素敵な仕事です。
>thermeさん
ありがとうございます。私一人の力ではなく、スペインには同じ情熱と志を持ったスタッフが揃っていて、彼/彼女たちのサポートにはホントに助けられています。ただ、「夢」を実現するには、体力勝負の部分もあります^^ お互いに、健康に気をつけつつ、少しずつ「夢」をカタチにしていきたいものですね。

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