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接客業の鑑

2011.12.13.Tue.01:02
洋服なんて、古着かセール品で充分。
ブランド店で買物をすることも、ほとんどナシ。
そんな私ですが、10年ほど前、当時はまだあまり知られていなかったあるブランドの服をちょいちょい購入していた時期がありました。
素材もパターンも縫製もなかなかよく、沖縄の紅型や日本の茶裂の文様を組み込むなど、どこか土着性のあるテイストで、価格もお手頃。
ユニークだけど飽きのこないアイテムが豊富で、愛用していました。
その後、そのブランドは出店数を増やしてメジャー級に成長し、それに伴って品質やデザインは見る影もなくなり、一方価格だけは右肩上がりになっていきました。
最近では、その店に足を運ぶ機会も、めっきり減っていました。

そのお店に、ほっこりした笑顔がとてもキュートな女性がいました。
初めて会ったころ、おそらく彼女はまだ20代半ばだったはず。
顔なじみの店員さんが次々と寿退社や転職等で姿を消すなか、彼女だけはあちこちの店舗に配属が変わりながら、ずっと現場でマネージャーとして活躍し続けていました。

おそらくこの10年あまりの間に彼女と言葉を交わした回数は、片手で数えられる程度。
なのに、いつ会っても彼女は、私の名前、職業(会うたびに職業が変わっていた私なのに!)、前回購入した服、前回交わした会話…etc.をほぼ完璧に憶えてくれていました。
つねに出過ぎず引き過ぎずというスタンスのアドバイスは、親身ながら、的確かつ率直。
彼女から勧められて購入した服の多くが、いまも現役でヘビロテ中です。
以前研修講師の仕事をしていたことのある私は、彼女の接客の素晴らしさを、とある企業の新人研修で紹介したこともありました。
「接客業の鑑」――私の彼女に対する印象は、まさにそんな感じです。

その女性が今年一杯で退社すると、先日たまたま別の店員さんから教えられた私は、仕事の合間を縫って久しぶりに会いにいきました。
おそらく3年ぶりくらいのはずですが、私の顔を見ると、開口一番名前で呼びかけ、「お久しぶりです!」と駆け寄ってくれました。
相変わらずスゴすぎる記憶力…脱帽です。
「ちょうど、先週末○○さん(=私)のことを考えてたので、今日お会いできて、すごく嬉しいです。
以心伝心ってホントにあるんでしょうかね。
連絡先を交換したお客さまには、退社のご挨拶のメールをお送りしたんですけど、そのとき、ああ、ご連絡先を伺ってなかったなって思って…そのまま辞めてしまうのがすごく心残りだったんです」。
こんな台詞、ウソでも言われてイヤな人はいないでしょう。

私が想像していた通り、彼女は結婚やヘッドハンティングで辞めるわけではなく、次の仕事も決めていないとのことでした。
あまり多くを語らない人ですが、別れ際に一言ぽつり。
「社長がね、もう何を言っても聞いてくれなくなっちゃいました…」。
社長、とは、このブランドの初代デザイナー。
おそらくそのデザイナーの作品に惚れ込んで、彼女はこの仕事に関わりはじめ、ブランドの成長を見守ってきたのでしょう。
その後、デザイナーは経営に専念し、東京のプチブランドは全国区へと急成長を遂げました。
その一方で、彼女は、商品の品質や出店の仕方、顧客対応、その他私などには知り得ない多くのことをめぐって、理想と現実との間で煩悶しながら、仕事を続けてきたのかもしれません。
とりわけこの数年間、そんな気配が何となく私にも伝わってきました。

事業規模が大きくなれば、それに伴って変わっていかざるを得ないものは、確かにあるでしょう。
でも、昔なじみの顧客や厳しい時代を支えてきた従業員が離れていってしまうのは、とても淋しいこと。
彼女のような人に、「お客さまに対して心苦しくなってきた」と言わせてしまうような「成長」には、やはり大きな落とし穴があるような気がします。
まあ、ウチがすごくちっちゃい会社だから、そう思うのかもしれませんが…

入社以来14年間、年末年始に一度も里帰りできなかった彼女は、この冬ようやく北陸のご実家でお正月を過ごすとのこと。
店員と顧客ではなく、普通の友人として、これからもよろしくね、と連絡先を交わして別れました。
彼女のような人なら、きっと次の仕事でも、ステキな笑顔で多くの人を魅了し、幸せな気分にしてくれることでしょう。

長年のファンとして、ささやかなエールを送りたいと思います。
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