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こんにゃく足でお悩みの方へ

2013.01.19.Sat.00:18
「こんにゃく足」ということばを、お聞きになったことはありますか?
語感が示すとおり、たいへん柔らかい足のことです。
ただ、生まれつき
身体が柔軟な人は世の中にたくさんいますが、そうした体質の方全員がこのタイプに当てはまるわけではありません。
こんにゃく足とは、靭帯(*註1)などの結合組織が先天的に柔らかく、かつ筋肉が充分に発達していないやわ足のことをさします。
こうした足は、甲の各関節(ショパール関節・リスフラン関節・MP関節)の可動域が大きく、甲の骨(中足骨)を握ると足幅がきゅーっと細くなります。

靭帯が柔らかい人は、アソビがある分捻挫などはしにくいのですが、姿勢や骨格が崩れやすいという弱点を併せ持っています。
開張足(=横アーチが崩れて平らになる)や扁平足(=土踏まずが崩れて平らになる)になるリスクも、靭帯が硬い人よりはるかに高いと言えます。
こうした弱点を補うのが、運動などによる筋力アップ。
筋肉がサポーターやテーピングの役割を果たし、柔らかすぎる靭帯を助けてくれるのです。
したがって、しばしば誤解されているようですが「こんにゃく足は遺伝だから諦めるしかない」というのは誤りです。
こんにゃく足になりやすい体質は生まれつきのものですが、筋力をアップさせることで弱点を補うことができ、また「フィットした靴を履いてきちんと歩く」といった日常生活のなかでその筋力を培うことも充分に可能です。

では、こんにゃく足の方は、どんな靴を選べば良いのでしょうか。
多くの方が、合う靴が見つからないというお悩みをお持ちのようです。
率直に言ってこんにゃく足は、高度なフィッティング技術や個別具体的な対応が求められ、靴選びにも困難が伴います。
というのも、フィッティングとは足と靴を適合させることなのですが、こんにゃく足の場合、身体の中で骨がずるっと動いてしまうのです。
このため、静止しているときはフィットして見えるのに、歩きはじめると靴から踵がすっぽ抜ける、といったことがしばしば起こります。

一般的には、柔らかい足ほどタイトな靴によるサポートが不可欠。
しかし、筋肉量が少ないと骨や軟部組織にダイレクトに負荷がかかってしまい、圧痛や疼痛を引き起こしやすくなります。
かといって緩い靴やサンダルなどばかり履いていると、足の筋肉を使ってしっかりと歩くことができず、緩急のないいわゆる「ペタンペタン歩き」に。
加えて、こうした歩き癖がさらなる筋力低下や筋ポンプ作用(*註2)の減少をもたらし、むくみやサイズの大幅な変動(*註3)に繋がることもあります。
ただでさえフィッティングの難しい足なのに、靴選びをさらに困難にする悪循環に陥ってしまうのです。

ただ、締めつけに弱いといっても、どの部分も同じ感受性を持っているわけではありません。
比較的フィットしていても痛みを感じにくい部位で、しっかりとサポートすることが必要です。
また、デザインや素材を工夫することで、同サイズの靴でも履き心地は大きく変わります。
一般的には覆う部分が大きい靴の方が圧力分散効果が大きく、布や合皮の靴より革靴の方が馴染みやすいと言えます。
とくに足当たりの柔らかいヌバックなどは、比較的履き慣らしが楽でしょう(逆に、伸び率の少ないパテントレザー(=エナメル)やエキゾチックレザーなどは、あまりお勧めできません)。
また、微調整が利くデザイン――紐靴やストラップ靴、ベルクロ(=マジックテープ)靴など――なら、サイズの変動やむくみにもある程度対応できます。

残念ながらこんにゃく足の靴選びに際しては、選択肢が狭まってしまうことは否めません。
それでもベターな靴選びをすることで、足の状態や歩行フォームなどが改善すれば、少しずつ選択肢が広がる可能性も出てきます。
靴の側からも、足の側からも、そして身体の中からも、良い「落としどころ」を探る工夫を重ね、ぜひ「運命の一足」と巡り会うチャンスを広げていただきたいと思います。

最後に…かく言う私も、先天的に靭帯が
ヤワな体質の持ち主です。
加えて、雪国で生まれ育ったため、幼い頃から「ペタンペタン歩き」の癖がありました(いわゆる「正しい歩き方」で雪の上を歩くと、滑って転んでしまうのです…>_<
)。
さらに間違った靴選びによって外反母趾を悪化させ、外科手術を受けるハメにもなりました。
そんな私でも今日まで細々とフラメンコを続けてこれたのは、自分の身体や足と対話しながら小さな工夫を積み重ねてきたからではないかと思っています。
元こんにゃく足人間からお悩みのあなたへ、ささやかなエールを送ります

*註1
靭帯とは、いわば骨と骨をつなぎとめている繊維状の硬いバンドのようなもの。
捻挫とは、靭帯の繊維の一部が伸びきったり切れてしまったりした状態です。より損傷が大きいものを不全断裂といい、さらにバンドが切れてしまうと完全断裂という事態に至ります。断裂してしまった靭帯は再生しないと言われており(わずかながら再生するという立場をとる研究者もいます)、部位や状況により
再建手術を行うことがあります。


*註2
筋肉には、大きく分けて①姿勢保持、②運動、③筋ポンプ作用という3つの働きがあります。このうち③
筋ポンプ作用とは、筋肉が緊張と弛緩を繰り返すことにより、血液循環を促す働きを指します。
血液は身体各所に栄養と酸素を送り届け、老廃物を回収する働きをしていますが、心臓から勢いよく動脈に押し出された血液の圧力は、心臓から離れるほど減衰します。
このため心臓から最も遠い場所にある足は、もっとも老廃物が滞りやすい場所と言えるでしょう。
しかも、血管壁が厚くそれ自体が筋肉に似た働きをする動脈と異なり、血管壁が薄い静脈には、こうした機能が備わっていません。
さらに、老廃物を含んだ静脈中の血液が足から心臓に戻る際には、重力に逆らって遡上しなくてはなりません
このため、静脈の周りにある筋肉が、乳搾りのような動き
(=ミルキングアクション)により血液の還流を助けています。
歩くことは、このミルキングアクションを促すもっとも手軽な方法のひとつです。
ふくらはぎが「第二の心臓」と呼ばれる所以です。

*註3
こんにゃく足の場合、むくみの度合いにより計測のたびに数値が変わったり、季節的変動により夏と冬で大きくサイズが異なる…といったケースが散見されます

セノビージャ・ハポンの公式サイトはこちら

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コメント
1 ■無題
はじめまして、たまたまコンニャク足を検索して
こちらへ辿り着きました。
とても分かりやすいご説明、とても勉強になりました。
私は間違いなく、コンニャク足の持ち主と判明w
パンプスはよくすっぽ抜けます。
サイズ選び、デザイン選び、気をつけたいと思います。
2 ■Re:無題
>hokoさん
はじめまして。コメントありがとうございます。
そうでしたか… 靴選びはどなたにとっても難しいものですが、こんにゃく足さんの場合は特に大変ですよね。
少しでもお役に立てたら嬉しいです。
今後ともよろしくお願いいたします。

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