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No coffee, no life

2012.11.14.Wed.17:06
コーヒーなしの人生が考えられない人間にとって、なじみのコーヒー店は特別な存在です。

高校時代から親しんでいた、吉祥寺「珈琲専門店もか」のアルベルト・ブレンド。
店主の故・標交紀さんと、彼を支える妻和子さんが創り上げるコーヒーは、余分なものを削ぎ落とし珠玉
風味を追求した、まさしく「芸術作品」と呼びたくなる味わいでした
どこまでもストイックな姿勢を貫く標さんは、言わばコーヒー界の「
求道者」。
喫茶併設だった店を
突然豆売り専門店に変えてしまったり、焙煎に集中するため
午前中は一切電話に応じず、時には店を閉めて究極のコーヒーを探す旅に出てしまう、という徹底したこだわりを持ち続けました。
決して愛想が良いとはいえず、一見気難しそうな空気をまとった人でしたが、それはおそらく正直さや不器用さの裏返しだったでしょう。
注文の電話をかけると、いつも棒読みのような口調で出てくるのですが、こちらが名乗った途端に「ああ、○○さんですね、いつもお世話になっております」と嬉しそうな声に変わりました。
作り笑いをしない人の笑顔が心に沁みるように、その声はこちらの気持ちまで柔らかくしてくれたものでした。

ある日いつものように豆を注文したとき、
和子さんから「主人の病気療養のため、今回のご注文を最後にしばらくお休みをいただきます」と告げられました。
詳しいことは伺いませんでしたが、その声が病の重いことを
伝えていました。
そのとき送っていただいたコーヒー豆のうち一包を、
私は願をかけるつもりで冷凍庫の一番奥にしまい込みました。
標さんが恢復したら飲もう、と…
その豆は
いまも、冷凍庫の同じ場所で眠っています。
そんな香りも味も飛んだものはコーヒーではない——標さんがお元気だったら、きっと
そうおっしゃるでしょう。

一周忌があけたあと、
「もか」を閉店することを知らせる一枚のはがきが
和子さんから届きました。
周囲からは、何とか続けてほしいとの要望が多数寄せられたそうですが、「余人をもって替えがたいとの思いから」閉店に至ったとのこと。
正直に言えば、あんなにストイックな人って、ひょっとして妻にとっては「暴君」だったのではないかしらん…と思っていなかったわけではありません。
しかし、その後何度か和子さんとやりとりを交わし、夫としても一人の人間としても最高最愛の人であったこと、その唯一の大切な人を失った淋しさは何年たってもまったく変わらないことを知りました。
「いまも心のリハビリ中です」——
繊細なペン字の賀状には、そう綴られていました。

「もか」を失った後、私自身もコーヒーを求めて
彷徨わなければなりませんでした。
求道者ではなく、迷子のように…

現在の定番コーヒーは、台東区日本堤にある「カフェ・バッハ」のバッハ・ブレンド。
靴学校に通い始めたころ、クラスメイトから教えてもらったお店です。
浅草から花川戸、今戸、東浅草、清川、日本堤、泪橋、南千住へと続く吉野通り(旧称山谷通り)には、靴作りの道具や材料を扱う問屋・小売店が点在しています。
革や接着材などを仕入れ、重い荷物に疲れて一息つきたいとき、絶妙なロケーションにカフェ・バッハはあり、靴職人や靴学校の学生にはおなじみのお店です。
店主の田口護さんは、『田口護の珈琲大全』をはじめコーヒーに関するご著書も多数あり、後進の指導や講演活動などにも力を入れておられ、
言わば「伝道師」的存在と呼べるでしょう。
そんなカフェ・バッハのコーヒーは、一言でいうなら「風味絶佳」。
豆の一番美味しい部分をひき出してあげようという愛情に満ちた、とても優しい味わいです。
そんな優しさの一端に触れる出来事が、今日ありました。

先日、年初に手術を受けた父のために、お店に電話をかけました。
欲しいものはないかと尋ねても、特にない、と気のない返事の父ですが、こちらのコーヒーの差し入れだけはとても喜んでくれたのです。
私の定番バッハ・ブレンドではなく、父の好むモカ・マタリ(なぜか年配者はモカ好きが多い^^)を注文し、さらに専門店に対して大変失礼とは知りつつ、無理なお願いをしてみました。
「通常より少し浅煎りで、かつ通常より少し粗く挽いていただけますか?」
受話器の向こうから「当店のコーヒーは、その豆ごとに最も適切な焙煎と粗さでご提供しているのですが…」という若い店員さんの答えが返ってきました。
そりゃそうだよね、無理だよね…と諦めかけたとき、
「ちょっと上の者に替わります」と、別の方に電話が取り次がれました。

次に電話口に現れたのは、相手を包み込むような優しい声の女性でした。
胃を全摘した父のための注文であること、お湯で薄めて飲みたくはないので粗挽きにして抽出時間を短縮したいこと、昔から好きだった味に近づけてあげたいこと、等々の事情を話すと、
「わかります。きっと柔らかな酸味がお好みなのでしょうね。
粗めに挽くのは、コーヒーの一番美味しいところだけをさっと抽出するのにとてもよい方法だと思います。
釜が大きいので、焙煎は少量ではなかなかうまくいかないのですけど、試してみます。
挽き方は、通常より粗めでお届けいたしますね。
コーヒーを淹れるときは、私共の店で扱っている濾紙をおつけしますので使ってみてください」


本日届いたコーヒーには、濾紙だけでなく喫茶店で提供している焼菓子の詰め合わせと手書きの文が同封されていました。
そこには労りの言葉とともに「出きることでしたら、はせ参じてコーヒーをおたてしたい気持ちでおります」という一文が添えられ、末尾には店主の妻文子さんのお名前がありました。
名店主の蔭には、必ず素敵な女性の存在があるんだなあ…

No good wife, no good coffeeとでも申しましょうか( 語呂悪いけど)。

コーヒーに限らず「商品」には、作り手・届け手の素顔が、ときには生き方までが、透けて見える瞬間があります。
その瞬間に立ち合える喜びを噛みしめつつ、そん
な想いで靴をお届けできる存在に、いつかなりたいな、と思いました。

ちなみに、フィッティングルームでお客さまにお出ししているのは、このバッハ・ブレンドです。
コーヒー好きの方、ぜひ味わいにいらしてくださいね

セノビージャ・ハポンの公式サイトはこちら

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コメント
1 ■無題
珈琲の世界に、そんな「求道者」や「伝道師」がいらっしゃるんですか。
素敵な人たちをご存知なんですね^^
2 ■Re:無題
>足ふみセラピスト 東 宏介さん
コメントありがとうございます。
たしかにいずれも「珈琲道」と呼びたくなるようなこだわりですね。
求道者のコーヒーは、私にとって幻の永久欠番。伝道者のコーヒーは大切な友人のような存在。おすすめです^^)/□

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