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前肩について

2012.06.11.Mon.21:31
久々にマジメ(?)なテーマのブログですあし
フットケアと体幹トレーニングを開始して三ヶ月目に入ったあるお客さまのエピソードをご紹介します。

ご自身のペースでのんびりとフラメンコを楽しんでおられたある日、先生のリサイタルに大抜擢され、上級者揃いのグループで群舞に参加することになりました。
これまでにはないハードな練習が続き、ちょっとお疲れ気味の彼女に、先輩からトドメの一言が。
「あなたは生まれつき前肩だから仕方ないけれど、群舞では目立ってしまうから、肩をできるだけ後ろに反るようにしてみてね」。
言われた通りにしてみると、身体全体がこわばって、とても踊りどころではありません。
「どうしよう…これじゃ踊れない汗」。

俗に「前肩」「巻き込み肩」などと称される、肩甲上腕関節・肩鎖関節・胸鎖関節などの変位。
フラメンコを踊っておられる方のなかには、とりわけこうしたお悩みが多く見られます。
「フラメンコは後肩がよい」という広く流布した誤解も、この悩みに拍車をかけているのではないかと思います。
言うまでもなく、フラメンコであれ日常動作であれ、関節を一定のポジションに固定することが身体にいいはずはありません。
必然性に即して、必然的なポジションで身体を操る、これは肩に限らずすべての部位で大切なポイントです。

先天的疾患や障害などによって関節可動域が制限されているわけではないのに、「前肩」になってしまう原因の大半は、やはり日常的な姿勢の癖による筋の拘縮や筋力低下です。
現代の私たちの生活の多くは、腕を前方・下方で使う作業が圧倒的に多いのです。
パソコン作業などを長時間同じ姿勢で行うなどは、その典型でしょう。
腕には、体重が50kgの人の場合で3~4kgの重さがあると言われます(*註)。
それだけの重みが常に同じ方向にかかっていてあまり動かなければ、身体の前部の筋肉は縮みこまり、背部の筋肉は伸びきってしまいます。
これは、肩こりや首こり、腰痛などにもつながっていきます。

では、肩甲骨をできるだけ引き下げ、ぐっと背筋を伸ばせば「前肩」は改善するのでしょうか?
残念ながら、Noと言わざるを得ません。
先輩の指導に従って「後肩」にしようと涙ぐましい努力をされているお客さまは、関節可動域が狭いのを何とか補おうとして背中をぐっと前に突き出し、肩甲骨の間が極端に狭まるというきわめて不自然な姿勢になってしまっています。
これでは、ブラッソをしなやかに動かすことも、クエルポをコントロールすることもできません。
無理矢理動かそうとすれば、それはブレーキをかけながらアクセルを踏むのと同じこと。
より大きなトラブルにも繋がりかねない、危険なアクションです。
加えて、「前肩」の身体の多くには、脊柱や骨盤の骨格配列の乱れが見られます。
このため、局部的に改善しようとしてもうまくいかないことが多く、身体全体の骨格のアライメントを正常化していくことが必要になります。

この日、フットケア+体幹トレーニングにいらしたお客さまに、まずいつも通りニュートラルポジションで立っていただきました。
ニュートラルポジションとは、運動するときに使う筋肉をできるだけ休ませ、姿勢をととのえる必要最低限の筋肉で立つ、「省エネ」姿勢です。
脱力すると、身体は自然と地球の中心部に向かいます。
言わば、地球の重力で「整体」をしてもらう、という感じでしょうか。
この時点ではやはり「前肩」が目立ちますが、まずは体幹から整えなくては始まりません。

次に、このニュートラルポジションを維持したまま、深呼吸をしながらブラッソを動かすストレッチを行います。
このとき大切なのは、決して胸や背中を反らせないこと。
反らせてしまうと、動かしたいところとは異なる部分が働き、肝心の関節は固定されたままになってしまいます。
肩甲上腕関節は、「球関節」とよばれる丸い形状の関節で、多方向に動く機能を持っています。
体幹をしっかりと保ち、関節の形や動きを意識することで、動かしたい部位をしっかりと把握することができます。
いつもはあまり使わない後方、さらに後上方にも腕をもっていき、ゆっくりと無理のないペースと範囲で動かしていきます。
ただし、痛みを感じるところまでやるのはNG。気持ちよく伸びをするような感覚が大切です。
最後に、ブラッソをうーんと真上に伸ばし、だらりと脱力。
これだけでも、肩位置がだいぶ補正されていきます。

ブラッソには、それ自体の重み=自重があります。
自重を感じながら無理なく動かすことは、しなやかに踊る上でも、トラブルを防止する上でも、とても大切。
しかし、関節をロックして腕自体に不自然に力を込めてしまうと、ブラッソの自重を感じることはできません。
自覚しにくい方には、500mlサイズのペットボトルなどあまり重くないものを手にして、ブラッソ練習をしていただくこともあります。
ブラッソを下げる、前に挙げる、横に挙げる、後ろに引く、真上に挙げる…それぞれのケースで身体がどう感じどう反応するかをじっくりと観察してみると、身体の自重=地球の重力がどんなに踊りの手助けをしてくれるかがよくわかると思います。

結果を求めるあまり、形だけを追い求めようとすると「正解」はどんどん遠ざかっていきます。
「前肩」の改善は、遠回りなようでもやはり原因まで立ち戻り、じっくりと姿勢やフォームの見直しに取り組むしかありません。
急がば回れ、ですね。

最後に…
フットケアなのに、なぜブラッソ練習?と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
フラメンコには、野生動物のような自然の摂理にかなった身体技法が求められます。
つまり、ブラッソ=前脚、肩甲骨=前脚の骨盤、肘=前脚の膝、手首=前脚の足首。
そう考えると、体幹と上肢・下肢の関係がさらに深く理解できるのではないかと思います。

*註 : 一般に「腕」とは、肩甲上腕関節より遠位(=肩より先)を指すものと解されています。しかし、スポーツやダンスのように身体を自由に操作するジャンルでは、「上肢」の概念がより重要となるでしょう。
上肢は、上肢帯(鎖骨、肩甲骨)と自由上肢(上腕骨、橈骨、尺骨、手根骨、中手骨、指骨)からなります。つまりブラッソの付け根は、身体の前部では喉元のあたり、背部では肩甲骨からと考えなければなりません。ブラッソを操る際に陥りやすい誤りのひとつに、肩を固定したまま先だけを操作しようとして不自然な挙動になってしまうケースが挙げられます。
なお、両上肢の重さは、体重が50kgの人の場合4~5kgが目安といわれます。


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